映画祭レポート④/マスタークラス 冠木佐和子「アニメーション作家じゃなくてギャルって呼んで」


[写真]右:冠木佐和子さん、左:通訳
 
 映画祭最終日、本映画祭で長編および学生コンペティション部門の国際審査員を務める冠木佐和子さんによるマスタークラス「アニメーション作家じゃなくてギャルって呼んで」がを開催された。国際的な映画祭で数多く受賞経験をもつ作家自身が、アニメーションの世界に入った経緯を、これまでに制作した作品上映を交えながら語った。
 
 幼少期から絵を描くことが好きで芸術大学を目指していたが、東京藝術大学を受験するも不合格に。合格した多摩美術大学に進学するか浪人するべきかを、インターネットの掲示板サイト「2チャンネル」で相談したという。そこで「絶対に多摩美術大学に進学したほうが良い」と後押しされ、多摩美術大学グラフィックデザイン学科に入学。大学では2年次にアニメーションを制作する必修の授業があり、そこで初めてアニメーション制作を経験した。3年次にも再び授業でアニメーション制作を行うが、その制作作業に大きな苦労を伴ったため、一度はアニメーションへの熱意が削がれてしまった。しかし、4年次になって卒業制作に取り組もうという時、周りからもう一度作って欲しいという要望や説得を受け、アニメーションを作ることを決意したという。
 

 
 卒業後はアダルトビデオの制作会社に入社するが、卒業制作作品『肛門的重苦 Ketsujiru Juke』が多くの映画祭にノミネートされ、映画祭に行くために仕事を休む毎日が続いた。会社からも「ここまで仕事をしないADは初めてだ」と言われ、アニメーション制作に戻ったほうがいいのではと勧められた。その後退職を決意し、再び東京藝術大学の大学院を目指すが、願書の提出期限が過ぎていたことから母校である多摩美術大学の大学院に入学、再びアニメ制作に本腰を入れる。
 

 
 大学院時代に制作したミュージックビデオ作品『MASTER BLASTER』は、「好きな人の肛門に隠れたい」という発想から生まれたそう。また、『おかあさんにないしょ』という作品では「うたのおにいさんに憧れている先輩に“夜のおにいさん”になってもらおう」という発想のもと制作し、一部コマ取りアニメーションのシーンでは教員を巻き込んでクレイの人形を作ってもらうなど、多くのスタッフの協力のもと完成した作品となった。また、本作品をYouTubeにアップした際には、その性的な内容から『多摩美にはこんなのしかいないのか』などのコメントが寄せられたと語った。
 

 
 修了制作作品『夏のゲロは冬の肴』は嘔吐する行為にはまっていた頃の劣等感を描いた作品だ。こちらもYouTubeに投稿したが、「当時YouTuberになりたかったのだが、通報により削除されてしまい、それから投稿ができなくなってしまった」という前途多難のエピソードも披露した。
 

 

 
 最後は、本映画祭のインターナショナルコンペティション ファミリープログラムにノミネートされている冠木さんの新作『ゴキブリ体操』未公開部分も上映。冠木さんの意外な経歴と、人間の営みや愛情をポップに表現した唯一無二の作品たちは観客の笑いを誘い、会場は終始盛り上がりをみせていた。