映画祭レポート⑧/爆音上映『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR YOU- 完全版』


 
 映画祭3日目、長編コンペティション部門ノミネート作品である『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR YOU-完全版』の爆音上映が行われた。
 
 『少年ハリウッド』は2014年にTVアニメ第1期、2015年に第2期が放送された、男性アイドルグループ「少年ハリウッド」が日々成長していく姿を描いた作品である。第2期の最終話は全て手描きのライブシーンで構成されているが、TV放送の段階では映像化できなかった楽曲もあった。そこで、TVアニメでは観ることのできなかった楽曲を映像化するべく、クラウドファンディングを実施。最終目標金額の5,000万円を大きく上回る6,000万円近くの支援が集まり、制作されたのが本作品である。
 

 
 上映前に、サプライズゲストとして、『少年ハリウッド』の原作・脚本・シリーズ構成・作詞を務める橋口いくよさんが登壇した。TVアニメの放送時間は20分程度しかなかったが、ライブにはもともとセットリストがあり、全てのパフォーマンスをファンの方々に観てもらいたいという思いがあった。しかし、アイドルグループのライブシーンを全て手描きで制作するというのはアニメ業界でも非常に大変なことであり、放送ではダイジェストという形をとることに。放送終了後、ファンから「本当に観たい」という声が多数寄せられ、すべての楽曲を制作するためにクラウドファンディングを行うこととなったが、「クラウドファンディング自体もダメ元で、とにかく1曲でも多く観てもらいたいという気持ちでした」と当時の心境を振り返った。
 

 
 本作品は、アイドルのライブをまるまる全編手描きによって制作されている点が大きな特徴である。橋口さんはダンスが完璧でない点も日本のアイドルの魅力であると考えており、「手が揃わない」、「リズムのとれていない人がいる」なども手描きだからこそ細かく表現できているので、是非そこにも注目してほしいと語った。
 
 楽曲については、作詞はすべて橋口さん自身が担当している。作曲は日本のレジェンドとも呼ばれる林哲司さんがほとんどの楽曲を手がけているため、格好良くもあり可愛さもあり、フレッシュな魅力溢れる曲たちが揃っている。また、このライブに向けて少年ハリウッドが積み上げてきた想いを表現したような歌詞が多く感じられ、不思議と初めて観た人でも気持が乗って楽しめるのではないかと話した。
 
 橋口さんの降壇後、いよいよ『少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR YOU-完全版』の爆音上映が開催。爆音上映は通常の上映よりも単に音量を大きくしたものと想像する方も多いが、音楽ライブ用の機材を用いて事前に細かい音の調整が行われるため、より臨場感を味わうことができる。今回の『少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR YOU-完全版』の上映でも音の美しさや、実際に会場でアイドルがマイクを通して歌っているような歌声には驚いたファンも多かっただろう。
 
 今回は英語字幕入りの上映となり、ファン向けの上映会とは異なる映画祭の雰囲気に、緊張している様子の来場者も見られたが、上映が始まってしまえばみな終始楽しそうな表情で少年ハリウッドのライブに参加していた。