映画祭レポート⑨/特別講演 数土直志「アニメの企画はどこから生まれるのか。 アニメ会社の新たな流れ」
映画祭3日目、アニメーションジャーナリスト数土直志さんをお招きし、特別講演「アニメの企画はどこから生まれるのか。アニメ会社の新たな流れ」が開催された。昨年、『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社文庫)を上梓し、アニメーションジャーナリズム、特にビジネス分野において卓越した知見を持つ数土さんが、アニメ制作会社の新たな流れについて講演を行った。
数土さんは大学を卒業後、証券会社に就職。その後、アニメーションを取り巻く環境を解説するアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」を開設(同サイトは2012年に株式会社イードに譲渡)、現在は「アニメーションビジネス・ジャーナル」を個人で運営しながら、アニメーションジャーナリストとして活躍されている。
現在のアニメ制作会社を取り巻く環境として、海外動画配信会社(Netflixなど)やゲーム会社(特にアプリゲーム会社)などこれまでとは異なる会社による積極的な投資が行われたことによりアニメ全体の製作本数が増え、しかし制作コストが上がることで、スタジオの経営が圧迫されることが多くなっているという。つまり「制作費の増大>企画の増大」という状況にある中で、「現場の資金不足」が大きな問題になっているのである。
続けて、アニメ制作会社の仕組みと歴史について語られた。数土氏は、近年新しく設立された国内の制作会社を大きく4つに分類して解説。1つ目にスタジオコロリドなどインディーズらしさが目立つスタジオ、2つ目にスタジオジブリの後継者といえるスタジオ、3つ目に独立系グループスタジオ、そして4つ目にCGスタジオである。
今後のアニメ業界については、「インディーズの流れを汲んだクリエイティビティの高さや、デジタル化による生産性を高めたスタジオの隆盛が目立つようになっている」と、アニメスタジオの新たな動きについて触れた。濃密な内容に、集まったアニメーション関係者らは熱心に耳を傾けていた。